オレゴン健康科学大学の宍戸英樹博士研究員を迎えセミナー開催

 11月27日、オレゴン健康科学大学で博士研究員として勤務する宍戸英樹氏を講師に迎え、生命情報工学専攻主催でセミナーを開催しました。
         【テーマ】「タンパク質構造にみる新しい世界~基礎研究から創薬まで~」

講師:宍戸 英樹 博士
講演会の模様(理工学部棟E201)
セミナー終了後も懇談が続く

■講師プロフィール: 宍戸 英樹 Hideki Shishido, Ph.D
創価大学工学部生物工学科卒業後(2005年)、本学大学院工学研究科で博士号(工学)取得(2010年)。本学助教を経て2012年よりオレゴン健康科学大学にて博士研究員として現在に至ります。オレゴン健康科学大学では、近年日本でも注目されている新たな研究領域である「新生鎖」に関する研究に携わっています。これまでに新生鎖を対象にした新規のハイスループット創薬スクリーニングシステムの開発に成功し、今後さまざまな遺伝性疾患の創薬研究への応用が期待されます。また、疾患発症の仕組みも研究し、米科学誌「サイエンス」などへの論文掲載、国際会議での招待講演、特許取得、国内外の競争的研究資金の獲得など実績を積み重ねてきました。
今回のセミナーも、12月1日から神戸で行われた国際学会【BMB2015(第38回日本分子生物学会年会、第88回日本生化学会大会 合同大会)】に、海外若手研究者の代表として招聘されたことに合わせて開催されることになりました。
 

 【講演要旨】
 人の体の中では、数えきれないほどのタンパク質が常に働いており、その働きによって私たちは生命活動を維持することができています。そのタンパク質が何らかの原因で異常構造になると、タンパク質は正常に働くことができなくなります。この異常構造タンパク質が原因で発症する疾患は多く、有名なものでガンやアルツハイマー、そして欧米で最も有名な致死性の遺伝子疾患である嚢胞性線維症(Cystic  Fibrosis: CF)があげられます。
 一方、タンパク質は細胞内において、リボソームによって生成されます。リボソームは遺伝子情報を元に、20種類のアミノ酸から適切なものを選び、連結させ、ペプチド鎖を作成する“翻訳”という作業を行います。作成されたペプチド鎖はリボソームから出た直後の“新生鎖”と呼ばれる段階から構造形成を開始し、その過程で様々な因子が関与しています。
 私たちは CF の原因タンパク質である CFTR を研究対象にして、50  年来の説であった“翻訳のチューニング機能”がタンパク質の構造形成の際に働いていることを、世界で初めて実験的に証明しました[Science  (2015) 348, 444-448]。さらに私たちは、遺伝子変異が、タンパク質構造を翻訳中から異常なものにしていることを世界で初めて実験的に示しました(NACFC2015, BMB2015,投稿準備中)。これらの発見は創薬研究を行う上で有用な知見となります。また我々はこれらの研究をさらに発展させ、従来の手法とは全く異なる、新規のハイスループット創薬スクリーニングシステムも開発し(NACFC2013にて発表、国際特許取得、投稿中)、現在製薬会社や創薬研究所などと協力して CF に効能のある薬剤をスクリーニング中です。これらの発見・開発がCFのみならず、その他の構造異常が原因で発症する疾患の薬剤探索の一助になることが期待されます。本講演では、これまでの研究成果を学部学生の皆さんにも分かり易く紹介します。

 
参考サイト
オレゴン健康科学大学
  http://www.ohsu.edu/xd/
サイエンス掲載論文[Science  (2015) 348, 444-448]
  http://www.sciencemag.org/content/348/6233/444.full.pdf
BMB2015(第38回日本分子生物学会年会、第88回日本生化学会大会 合同大会)
     https://confit.atlas.jp/guide/event/bmb2015/top